全国共済お役立ちコラム

高齢ドライバーの自動車保険。リスク対策から保険料を抑える方法までを解説

2022-6-6

最近、新聞やニュースの報道で目にすることが多くなった高齢者ドライバーによる自動車事故。高齢になるほど、事故に対してご本人もそのご家族も不安が大きくなりますね。
事故の加害者となるケースも増加しており、自動車保険の補償範囲も気になるところ。
今回は高齢者ドライバーの自動車保険の補償内容を確認しておくことの重要性と自動車保険料をできるだけ抑えるコツ、運転免許証の自主返納の際に抑えておきたいポイント、高齢者ドライバー向けに創設された制度などについて解説していきたいと思います。

高齢者ドライバーの自動車事故とは?

警察庁の調査によると、70歳以上の運転免許保有者数は、令和2年では、運転免許保有者全体の約15.2%、1,244万人となります。運転免許証の保有者すべてが、日常的に自動車を運転するとは限りませんが、運転する可能性がある高齢者の人数がこれだけいることがわかります。

最近の高齢者ドライバーによる交通事故の事例と事故割合

近年、相次いで報道される高齢者ドライバーの交通事故の事例のひとつに、新聞やニュースで裁判も注目された東京・池袋で2019年4月、暴走した乗用車で母子が死亡した事故があります。当時の運転者の年齢は、87歳でした。90歳近い高齢者ドライバーによる運転だったことに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらの報道により、全体的に高齢者ドライバーによる交通事故が増加しているかのような印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、交通事故全体の件数自体は、自動車の安全性能の向上や政府の取り組み等により、年々、減少傾向にあります。同様に、高齢者による交通事故の件数も減少傾向にあります。 高齢者ドライバーによる交通事故の特徴は、他の年齢層と比較したときの重大事故(死亡事故)の多さです。

なぜ高齢者ドライバーは事故を起こすのか?原因と問題点

一般的に10代・20代前半のドライバーの場合、免許をとりたての人が多いため事故率が高くなると考えられますが、高齢者ドライバーの場合には、肉体的な衰えや認知機能の低下などが原因で事故を引き起こすケースが多くなると考えられています。

具体的には、高齢者においては「動体視力の低下」「体力や筋力の低下」「判断力の低下」などの症状がみられるようになります。そのため、高齢者ドライバーの中でも、とくに75歳以上の高齢者ドライバーについては「ハンドルの操作不適」「ブレーキとアクセルの踏み間違い」が多く発生しています。

また、「動体視力の低下」による影響としては、対向車や歩行者、標識などを確認しづらくなってしまうことが挙げられます。「体力や筋力の低下」に関しては、ハンドルを素早く切るなどの操作や長時間の運転などにも影響を及ぼします。そして、最後の「判断能力の低下」は、反射神経が鈍くなることでとっさの判断が難しくなります。

そのため、75歳以上のドライバーの事故の特徴として、「工作物衝突」や「路外逸脱」など車両単独事故が多くなっています。具体的には、操作ミスにより壁に突っ込む、車道から外れるなどの事故が挙げられます。

さらに、高齢者ドライバーは長年運転していたキャリアがありますので、若い世代と比べ運転技術に自信を持つ方や「自分は自動車事故を起こさない」と自負のある方も多くいらっしゃいます。実際、祖父母世代・親世代・孫世代に対し行った車の運転に関する意識調査※では、高齢者ドライバーの7割以上が自分の運転に自信があると回答しています。この自信も、高齢者ドライバーによる事故の原因の1つになると考えられるでしょう。

自動車保険は高齢になるほど高くなる?

自動車保険の保険料は、年齢によってリスクが異なるため、車を運転する人の年齢の範囲や記名被保険者の年齢層に応じて、保険料率を区分しています。

高齢者の交通事故が目立つようになってきていることも踏まえて、記名被保険者の年齢層を細分化し、高齢者ドライバーの保険料にも事故リスクの高さが反映されるしくみが設定されるようになりました。それでは、具体的にみてみましょう。

運転者年齢条件について

自動車保険の保険料は、補償する年齢により保険料が異なります。これを「運転者年齢条件」といって、全年齢を補償する場合の保険料が一番高く、その次に21歳以上、26歳以上、30歳以上、35歳以上と補償する年齢が高くなるにしたがって、保険料は安くなります(保険会社によって、区分は異なります)。

記名被保険者の年齢について

「記名被保険者」は、主に該当の車を運転する人のことを指します。この記名被保険者の年齢によっても、保険料が変わります。高齢者ドライバーの交通事故の増加により、30歳以上の年代が細分化されています。60歳以上70歳未満、70歳以上と分類され、年齢が高いほど保険料が高くなります。

高齢者ドライバーの高い保険料を抑える工夫・見直しのポイントとは?

①運転者限定の範囲を見直す

同居していた子供が独立し別居となった時や結婚を機に別居となった場合などは、運転者の範囲を見直しましょう。運転者が限定されているほど保険料は安くなります。

②走行距離を見直す

自動車保険の多くは年間走行距離によっても保険料が変わります。同じ保険会社で更新契約をする場合などは、昨年の実績をもとに保険料を出すところが多いです。 新規の契約においても、1年間の予定走行距離を告知し、どれだけ車を利用するかという事は、保険料決定の要因の1つとなります。 年間走行距離が少なければ、事故に遭う可能性も低いという考え方から保険料は安く設定されています。逆に年間走行距離が多ければ、事故に遭う可能性が高く保険料も高くなるという事です。年齢が上がり、車を利用する用途が減った場合などは、走行距離も見直しのポイントとなります

③特約を見直す

自動車保険の契約で基本補償にプラスして特約を契約されている方も多いのではないでしょうか。保険会社では主契約の基本補償をより充実させるために特約を用意し各社特色を出しています。特約をたくさんつけていると当然保険料も高くなります。特約の内容を見直し本当に必要かどうかご家族で話し合いましょう。

まとめ

高齢者ドライバーにまつわる制度や自動車保険について見てきました。現在、重大事故(死亡事故)の割合が高い高齢者ドライバーの方に向けて、運転技能検査の義務化などさまざまな対策が講じられています。また、「自動ブレーキ」を搭載した自動車の利用促進や、安全サポート車(サポカー)に限定した免許制度の創設など、高齢者ドライバーが安全に運転するための制度拡充も進められています。

高齢者ドライバーの交通事故を減らすためにも、交通事故を防止できる自動車を利用することは効果的と言えます。高齢者ドライバーの方や、その家族の方はこれらの最新の動向も視野に入れながら、今後の自動車の運転について検討していくとよいのではないでしょうか。また、高齢になると自動車保険料は高くなっていきますので、保険料を抑える工夫についてもしっかり検討しておきたいものです。自動ブレーキ特約などは、自動車保険の保険料を抑えることができるメリットもあります。

なお、安全サポート車(サポカー)は安全を支援する機能とはいえ、完全に事故を防ぐことができるわけではありません。運転に不安を感じ始めた場合や周りからみて危険な運転と判断されるような場合には、免許返納を検討する必要があるでしょう。