保険金にかかる税、申告しなかったらどうなるの?

生命保険などに加入していた場合、被保険者が死亡した時は「受取人」となっている人や「法定相続人」となる人が保険金を受け取ることとなります。
しかしもちろん、保険金全てそのまま受け取れるわけではなく、税がかかるという事を頭にいれておかなくてはなりません。
身内が死亡した場合、やる事が多く精神的なところも含めてなにかと落ち着かない日がしばらく続くでしょう。そんな中、万が一保険金に対する税の申告が漏れてしまった場合、一体どうなるのでしょうか?
【死亡保険金にも税がかかる】ということは必ず頭に入れておこう
冒頭で述べた通り、受け取った保険金は課税対象となりますので(例外あり)、必ず被相続人の住所地の所轄税務署に申告・納税する必要があります。
さて、税と言えば前回のコラムにて、「契約者」「被保険者」「受取人」の組み合わせで税の種類が変わる、と述べたことは覚えておりますでしょうか。
もう一度簡単に説明しましょう。
・契約者と受取人が同じで、被保険者が違う人の場合は「所得税」の対象
・契約者と被保険者が同じで、受取人が違う場合は「相続税」の対象
・契約者、被保険者そして受取人が全て異なる場合は、「贈与税」の対象
となるのです。
◎保険金の税は必ずかかるものなのか?
「死亡保険金には税がかかる」とは言っているものの、実はかからないケースや、一部に対してのみ課税というものもありますので、同様に頭に入れておきましょう。
こちらも概要のみ説明します。
所得税に関しては、
一時所得金額の1/2のみが課税対象となります。
一時所得金額は、死亡保険金総額から、それまでに支払った保険料や基礎控除額を差し引いて計算する事ができます。
相続税に関しては、
相続税には保険金に対する非課税限度額が設けられています。
仮に非課税限度額を超えてしまった場合でも、最終的にはその超過分の金額が基礎控除額を超えていなければ、「税がかからない」という判定になるのです。
贈与税に関しては、
単純に保険金総額から基礎控除額が引かれた分が、課税対象となります。
詳しくは前回のコラム「死亡保険金にかかる税は「相続税」だけではない?」に記載していますので、そちらを参考にしてみてください。
それぞれの税の「申告期限」
もちろん、税の申告はいつまででも良いというわけではなく、申告期限があります。
◇所得税の申告と納税
所得税の申告と納税は、両方とも所得があった年の翌年、2月16日~3月15日の間に行う必要があります。
◇相続税の申告と納税
相続税の申告と納税は、相続があったことを知った日(一般的に、被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内に行わなくてはなりません。
◇贈与税の申告と納税
相続税の申告と納税は、贈与を受けた人がその年の翌年、2月16日~3月15日の間に行う必要があります。
もし「申告」を行わなかった場合は…?
申告を故意にせずに税金支払いを逃れる無申告は、れっきとした「脱税行為」に当てはまります。
先ほど述べた通り、所得税や贈与税は2月16日~3月15日の間に、そして相続税は相続があったことを知った日から10ヶ月以内に行う必要があり、無申告の場合はペナルティがかせられることとなります。
では、どのようなペナルティがあるかを見ていきましょう。
【無申告加算税】
無申告加算税は、期限までに申告しなかった場合に課せられる税となります。
税務調査の通知が来る前に自己申告した場合の税率は5%ですが、通知が来てから調査による更正の予知前までは10%~15%となります。そして更正の予知後は、15%~20%にもなるのです。
【延滞税】
延滞税は文字の通りで、納税が期限内に行われなかった際にかせられる税金です。無申告加算税と一緒にかかることになります。
延滞税は、「申告はしていたが未納」というケースにも同じようにかかりますので注意が必要です。
税率は、期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは原則として7.3%、それ以降は14.6%にもなります。
【重加算税】
申告をせず、故意に隠ぺいしていた悪質なケースでは、重加算税が課されることになります。
税率は、過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%にもなります。
重加算税は、1番目に記した「無申告加算税」の代わりになる為、無申告加算税と重加算税が同時にかせられることはありません。
【刑事罰】
脱税した場合、刑事罰が科せられる可能性もあります。その場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられ、または併科されます。罰金について、脱税額が1000万円を超えている場合は、情状により脱税額までかされることがあるのです。
刑事罰だけではなく、同時に「延滞税」や「重加算税」もかかってくる為、負担は相当なものだということがわかるでしょう。
無申告は必ずバレます!
実は、それぞれの税には時効があります。例えば、所得税なら3・5・7年、相続税なら5年または7年、そして贈与税は6年・7年になります。
しかしこれらの時効までの期間を考える前に、申告漏れなどに気付いた場合・意図的に申告をしていない場合は、速やかに申告することが賢明でしょう。なぜなら、税務署の調査力は半端ではなく、必ずバレるからです。
例えば、よくある脱税の手口としてあげられる、「売上の過少申告」。これは取引先の請求書を調べることで売上と対応していないことがわかります。
更に、本来存在しない人を作りあげて人件費を計上し、経費を水増しする「架空の人件費」に対しては、実際にその人物がいるかを調査すれば確認できてしまうのです。
まとめ
意図的でなくても、税の申告漏れはペナルティの対象になってしまいます。申告漏れに気付いた際には速やかに申告をしに行きましょう。
また、少しでも税を軽減させたいからと言って不正に申告したり無申告でいると、結果的に本来納付するべき税額よりも相当な額を支払わなければならなくなります。隠し通す事は不可能に近いですので、その後の事を考えるとしっかりと納税をしておいた方が賢明と言えます。