死亡保障の金額はいくらに設定すべき?

保険の商品の中でも保障金額の高い死亡保障。いったいどの程度の保障金額を考えていますか。もちろん、現在と将来で必要な金額は変わってきます。しかし、死亡保障の金額を決めるのは重要なポイント。保障金額が高いと月々の支払い金額も高くなりますし、支払い金額を安くすることで保障金額が足りなくなってしまっては、元も子もありません。今回は、死亡保障の金額をいくらに設定すべきなのか考えてみましょう。
一家の大黒柱が亡くなった時に必要な金額
収入を支える一家の大黒柱が亡くなった時に、その後どれくらいのお金が必要になるのか考えてみましょう。
まずは、死亡時の葬儀費用などの「死亡整理金」と呼ばれるお金。葬儀費用だけで換算すると、約200万円前後といわれています。
子供の教育費用なども必要なお金です。各家庭により必要なお金は異なりますが、生活資金の一部を貯蓄するなどして、教育費用を残しておくのが一般的ですね。
遺族が生活する上で必要なお金は、それまでの月々の生活資金がベースとなります。もちろん、それまでの生活費の全額が必要になるわけではありません。
仮に夫が亡くなった場合、本人の生活費はかからなくなりますし、遺族年金などの公的な補助金もありますので、必要となる生活費は今までの生活資金の7割程度といわれています。20万円の生活費がかかっていた場合、14万円程度の生活費で済むと考えておけばいいでしょう。また、子どもが独立した際は、夫が亡くなる以前の生活費の5割程度ともいわれています。
それ以外のコストで存在感が大きいのは、やはり住居費。ただし、持ち家で住宅ローンを抱えている場合、住宅ローン用の生命保険に加入していることも多く、そういったケースでは生命保険会社が住宅ローンの残高を支払うことになります。
賃貸の場合は、家賃のことを考えなければなりません。夫が亡くなったことで、家賃の安い物件に引っ越すことや、妻の実家に引っ越すことを検討する必要もあるでしょう。
事例から見る必要なお金とは?
では、実際の具体例で考えてみましょう。
例えば、35歳の会社員で妻は31歳の専業主婦。子どもはまだ5歳。現在の生活費は月20万円、住まいは賃貸で、家賃は10万円とします。夫が亡くなるリスクに備えた場合、いくらくらいの死亡保障額になるのか計算してみましょう。
夫の葬儀費用でおよそ200万円。生活費用は月に20万円ですから、その後はその7割が必要になると考えて14万円。17年間で2,856万円となります。その後は、妻が65歳になり自分の年金を受給できるようになるまでの17年間、現在の生活費20万円の半分の10万円が必要と考えます。この総額が2,040万円になります。
住居費は現在の賃貸住宅に住み続けると仮定し、妻が年金をもらいはじめる65歳までの34年間、総額で4,080万円が必要です。
教育費用はどんな進路を選ぶかによってかなり差が出ますが、仮にすべて公立の学校に進学したものとして考えた場合、1,027万7,981円と試算します。
ここまでが夫が亡くなった後に支出するお金です。次に公的な死亡保障について見てみましょう。
公的な死亡保障金額は?
子どもが18歳になるまでの13年間、国民年金から遺族基礎年金が支給されます。この事例の場合、年額101万2,800円が支給されるため、総額で1,316万6,400円が支払われます。
夫が会社員だったので厚生年金からも支給を受けることができます。厚生年金から受け取れる額は、夫の生前の給与額などによって異なります。今回のケースでは仮に、年間48万7,366円を受け取れるものと仮定します。その場合、妻が65歳になるまでの34年間、総額で1,657万444円が支給されます。
さらに、中高齢寡婦加算もあります。このケースでは妻が40歳から65歳までの25年間が中高齢寡婦加算の対象となり、年間58万3,900円の支給を受けることができ、総額で1,459万7,500円が支給されます。
必要な死亡保障の金額とは?
予想される支出と公的に支給される保障額の差額は約5,770万円。大幅な赤字となります。
ただし、この事例では夫が亡くなる前と同じ住まいに住み続けています。また、夫が亡くなってからも妻は働いていない前提です。こういった点を見直すことで、差額にも違いが生じます。
たとえ住まいはそのままだとしても、子どもの手がかからなくなる高校入学から60歳までの19年間、月収10万円のパートで勤務した場合、それだけで2,280万円の収入になります。そうすることで必要な保障額が3,000万円台になります。
将来の見通しから死亡保障金額を決める
あくまで事例による計算ではあるものの、試算もせずに「死亡保障は2,000万円くらいで設定している人が多いから、我が家もそれでいいだろう……」と、安易に決めてしまうよりは現実的な金額が見えてくるはずです。
また、死亡保障の金額を予測するためには、「もしものことが起こった場合、住まいはどうするのか?」「子どもの進路はどうするのか?」など、家族の将来を予測することは必要不可欠です。家族の将来を見通しながら、家族にとって必要な死亡保障金額を決めるようにしましょう。