入院や手術したらいくらかかるのでしょう?

病気やケガなどで治療が必要になったとき、治るのだろうか?仕事は大丈夫だろうか?など、たくさんの不安があろうかと思います。特に、治療費はいくらかかるのかというお金に関する不安も大きいのではないでしょうか。
入院した場合にかかる費用には、治療費や入院基本料のほか、食事代や差額ベッド代、交通費、消耗品があり、先進医療を受けた場合は先進医療費がかかります。このうち公的医療保険が適用されるのは治療費と入院基本料で、あとは全額自己負担です。
入院中は医療費がかかるだけではなく、入院している間の収入も減少してしまうことにも注意が必要です。
手術費用を含めた入院費用の平均はどれくらい?
生命保険文化センターの生活保障に関する調査によると、「直近の入院時の自己負担費用」は、平均20万8,000円でした。
費用分布によると、もっとも多いのが「10~20万円未満(30.6%)」で、続いて「5~10万円未満(25.7%)」、「20~30万円未満(13.3%)」となっています。
病気やケガによって手術・入院が必要になると、このように万単位の高額の費用がかかることが多く、場合によっては手術費用が払えない方もいるでしょう。
がん、心疾患、脳疾患にかかるコストを確認
日本人の死因の上位を占めるがん(悪性新生物)、心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞などの脳疾患は、命に関わる大病です。がんは日本人の死因第一位、心疾患と脳疾患は突然発症し、即入院、手術となることが多い怖い病気。発症時の入院・手術だけでなく、長い治療・通院期間が必要になることが多い病気でもあり、かかったときのコストを知っておくことはもちろん、加入している保険の保障内容を確認しておくことが大切です。誰もが発症する可能性があるので、しっかり把握しておきましょう。
|平均入院日数、費用について
がん、心疾患、脳疾患は、進行の程度や回復のスピード、差額ベッド代などにより、入院日数と費用はさまざまです。あくまで目安となりますが、平均入院日数や自己負担額を算出したデータをご紹介します。自己負担額は、3割負担で概算しています。
【胃がん】
平均入院日数:約19日/平均費用:約90万円/自己負担額(概算):約27万円
【結腸・直腸がん】
平均入院日数:約18日/平均費用:約86万円/自己負担額(概算):約26万円
【肺がん】
平均入院日数:約21日/平均費用:約81万円/自己負担額(概算):約24万円
【乳がん】
平均入院日数:約13日/平均費用:約72万円/自己負担額(概算):約22万円
【高血圧系心疾患(心筋梗塞など】
平均入院日数:約61日/平均費用:約197万円/自己負担額(概算):約51万円
【脳疾患(脳梗塞)】
平均入院日数:約90日/平均費用:約136万円/自己負担額(概算):約41万円
【脳疾患(脳出血)】
平均入院日数:約90日/平均費用:約225万円/自己負担額(概算):約66万円
脳疾患の入院の場合、がんや心疾患に比較して約90日と入院日数が長く、それにともなって費用も高くなっているのがわかりますが、これは脳疾患の場合はリハビリに時間がかかる場合が多いため。また、心筋梗塞など高血圧性心疾患は、費用が約200万円と高額になっていますが、心疾患の手術は高度な技術が必要な上、さまざまな検査を行うためです。がんは胃がん、結腸・直腸がんなどに比べて乳がんの入院日数が少なくなっていますが、乳がんは比較的初期の段階で発見されることが多いため。がんは進行が進んでいるほど、入院日数と費用が増えます。
また、上記は病院に支払う費用のみの算出です。入院に伴うこまごまとした費用(例えば病院までのタクシー代、外食費、タオルや着替えなどの衣料費)は自分の家計から出さなくてはならないため、実際の出費はさらにかさむことが予想されます。
入院費用の自己負担を抑える方法
生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、令和元年から過去5年間に入院経験がある方の直近の入院において、逸失収入(入院しなければ得られていたはずの収入)があった割合は21.6%という結果になりました。
逸失収入の平均額は32万円、1日あたりの平均は1万9,500円で、収入も大きく減少してしまうことがわかります。
入院すると、入院費用がかかるうえに収入も減少してしまい、家計への負担が大きくなってしまいます。
少しでも家計への負担を減らすためには、次のような方法があります。
1. 高額療養費制度を利用する
高額療養費制度は、公的医療保険加入者の1カ月間(1日から月末まで)の医療費が、自己負担限度額を超えたとき、超過分が還付される制度です。
自己負担限度額は所得や年齢によって異なります。申請が承認されると、およそ3カ月程度で自己負担限度額超過分の医療費が還付されます。
高額な医療費がかかると思われる手術・入院の予定がある場合は、あらかじめ「限度額適用認定証」を取得しておくことをおすすめします。医療機関で限度額適用認定証を提示すれば、会計時に負担限度額までの支払いで終えることができます。
2. 医療費控除の手続きをする
1年間(1/1~12/31)で支払った医療費が世帯で10万円(※)を超えた場合、その一部を課税対象となる所得額から差し引く「医療費控除」が受けられます。
控除の限度額は200万円で、所得に応じた計算方法が設定されています。
医療費控除は毎年の確定申告の際に手続きをします。手続きには確定申告書のほかに、医療費控除の明細書を作成し添付しなければなりません。また、会社員の場合は確定申告書作成の際に源泉徴収票が必要です。
平成29年度から医療費の領収書の提出が不要となりましたが、確定申告期限翌日から5年は領収書の保管が義務付けられています。
なお医療費控除の対象となる金額は、実際に支払った医療費の合計額から、生命保険などで支給される入院給付金や、健康保険から支給された高額療養費などは差し引く必要があります。
控除対象となる医療費の線引きは、「治療が目的であるかどうか」です。診療や治療、薬代はもちろん、指圧師やはり師、灸師の施術なども控除対象となります。
一方、ビタミン剤などの健康促進ための医薬品の購入代や、美容や疲労回復が目的のマッサージなどは控除の対象外です。
※総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%の金額
まとめ
入院をすると治療費や入院基本料のほか、さまざまな費用がかかります。病気やケガは突発的なものですので、万が一手術や入院が必要になったとき家計に大きな負担をかけないためにも備えが必要でしょう。
入院をすると治療費など費用がかかるだけではなく、入院した方が家計を支える立場であった場合、収入が減少するというリスクもあります。