全国共済お役立ちコラム

脳卒中の治療とは?治療と仕事の両立は可能?

2022-12-4

脳卒中に見舞われた直後はまさしく「晴天の霹靂」で先が見通せず、不安ばかりが先走ります。
ご本人はもとよりご家族の方も心配が募ることでしょう。脳卒中後の社会復帰-復職は難しい部分が多くありますが、社会の受け入れや支援システムが徐々に整備されつつあり、就労に向けた取り組みが進んでいます。
また脳卒中の治療は、脳卒中のタイプや症状、障害などに応じて、薬物療法、手術や血管内治療、リハビリテーションを組み合わせて行われます。
今回は治療について詳しく見ていきましょう。ぜひ参考にしていただければと思います。

脳卒中の治療について

脳卒中の治療は、脳卒中のタイプや症状、障害などに応じて、薬物療法、手術や血管内
治療、リハビリテーションを組み合わせて行われます。
|薬物療法
脳卒中を発症してすぐは、症状の悪化や再発予防、早期回復のために注射
や服薬による治療が行われます。症状がある程度安定すれば、再発予防のために、高血圧、糖尿病、脂質異常症などをコントロールすることが重要となってきます。脳梗塞では再発予防のために、血の塊を出来にくくする薬である抗凝固薬(こうぎょうこやく)や抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)の服薬が継続されます。

|手術や血管内治療
脳梗塞では、脳の血管の中にカテーテルという細いチューブを入れて血の塊で
ある血栓を取り除くカテーテル治療、脳出血では脳組織への圧迫や損傷を減らす
ために出血した血の塊を取り除く手術(開頭術や内視鏡手術)、くも膜下出血で
は脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)と呼ばれる脳の血管にできたこぶを破裂するのを防
ぐクリッピング術(脳動脈瘤をクリップで挟む手術)やカテーテル治療が行われます。

|リハビリテーション
リハビリテーションは、脳卒中を発症してすぐに開始され、日常生活に戻る段階まで行われます。退院後も必要に応じて、リハビリテーションを継続して行います。リハビリテーションには理学療法(足の麻痺に対する訓練、立ち上がり、歩行訓練など)、作業療法
(手の麻痺に対する訓練、身の回りの動作訓練や高次脳機能障害に対する訓練な
ど)、言語聴覚療法(言葉の訓練や飲み込みに対する訓練など)があり、症状や障害の程度に応じて行われます。また立ち上がりや歩行をしやすくするために、足につける装具を用いるなど装具療法も必要に応じて行われます。

脳卒中の回復状況について

❖脳卒中になってからの主な経過
脳卒中の経過は主に、次の 3つの段階に分けられます。
① 発症直後の治療の段階
急性期:発症からおよそ 1-2 週以内
亜急性期:発症からおよそ 1-2 ヵ月以内

② 機能回復のためにリハビリテーションを受ける段階
回復期:発症からおよそ 3-6ヵ月以内

③ 日常生活に戻る段階
生活期:発症からおよそ6ヵ月以降

脳卒中発症後の回復の「経過」は、発症後の数週間は改善率が高く、その後なだらかな
回復を経て、発症後6ヵ月までに横ばいとなります。重度の麻痺ほど回復に時間を要し、
日常生活動作は手足の麻痺よりやや遅れて回復します。例えば、軽度の手足の麻痺は発症
後 6.5 週、その日常生活動作は 8.5 週までに最大回復へ、重度の手足の麻痺は発症後 13 週、日常生活動作は 20 週までに最大回復へ到達すると報告されています。また、言葉の障害や高次脳機能障害は、発症後 1 年~1 年半、場合によってはさらに長期間にわたり、緩やかに回復する傾向があります。結果的に残存する手足の麻痺や言葉の障害などの機能低下を「障害」と呼びます。脳卒中発症後の回復の「程度」は、発症時の重症度や年齢により異なります。就労世代などの若い脳卒中患者では、退院時に約 7 割は「ほぼ介助を必要としない」状況まで回復します。脳卒中の発症直後から、リハビリテーションを含む適切な治療により、復職することが可能な場合も少なくないです

脳梗塞の急性期治療

❖血栓溶解療法
発症超早期(3~6時間以内)につまった血管を再開通させることができたら、症状が劇的によくなる可能性があります。血栓溶解剤や血管内治療を必要とする特殊な治療法で、危険な副作用もおこる可能性がありますので、専門病院で行われます。
❖抗血小板剤
血管を固める役割をする血球である血小板の機能を阻害し、血液が固まりにくくする薬です。これ以上脳梗塞が広がったり、再発するのを予防します。急性期に点滴で、落ち着けば内服薬で使用します。

❖脳保護剤
脳梗塞のため痛んでいるがまだ死滅していない脳細胞を守る薬です。急性期に点滴で使用します。
|脳出血の治療
降圧剤で血圧をコントロールして出血が大きくなるのを防ぎます。出血の周囲の脳の腫れをとるために、抗浮腫剤を点滴します。出血が大きく、意識障害が強い場合は開頭術や定位的血腫吸引術で出血を取り除きます。

|くも膜下出血の治療
くも膜下出血は脳動脈瘤が破裂して再出血を起すことにより死亡する可能性の高い病気です。発症早期に手術をして再破裂を防ぎます。
❖手術方法
 開頭クリッピング術
開頭術により、外から動脈瘤の頚部を洗濯バサミのような“クリップ”ではさみます。

 血管内コイル塞栓術
血管内に径1mm以下の管“カテーテル”を入れ、動脈瘤を中からプラテナ製の“コイル”でつめて治します。近年急速的に発達し、開頭術よりも全身にかかる負担が少なく、有効的な治療法です。

脳卒中回復期の治療は?

脳卒中発症後の急性期治療に平行して速やかに急性期リハビリテーションを開始します。
これは急性期にベッド臥床を続けると四肢の筋力が低下し、関節が硬くなり、気力・体力も衰え、廃用の状態になります。これを予防するために種々の方法で急性期リハビリテーションを行います。一方、回復期は急性期の次の段階で脳卒中のダメージから心身が回復した状態ではじめる一歩進んだリハビリテーションで最も機能回復が見られる次期です。
個人の日常生活に見合った訓練を日常生活動作、歩行、飲み込み、言語などに付き目標を決めて集中訓練します。

まとめ

いかがでしたか。脳卒中になると不安に思うことや混乱することが多いかと思います。どのような治療があるのか、後遺症はどうなるのかなどを事前に知っておけばご本人だけでなく、ご家族も安心でき、事前に必要な対応も準備可能です。また病気や治療が引き起こす症状は働く際にそれまでにはなかった問題を引き起こすことがあります。以前と比べ治療による体調の変化があることをご本人から上司や同僚に説明しておくと、理解が得られやすく、職場からの配慮に結びつきます。自分の症状を振り返り、それぞれ出来る取り組みについて考えましょう。