脳卒中の後遺症について詳しく教えて!

脳卒中は日本人の死因ランキングで4位にランクインしていますが、介護が必要になる原因の2位にもランキングしています。そして脳卒中は寝たきりになる原因で第1位であり、日常生活に大きな支障が生じることが分かります。脳卒中とは「脳にただち(卒)に中(あた)る」という意味で、急に発症する脳の血管の病気の総称です。
脳卒中を早期発見でき、軽度で済めばもとの生活に戻れる可能性が高いです。しかしもし重症化すれば、重い後遺症が残ったり、最悪の場合死亡するケースもあります。今回の記事では、そんな脳卒中による後遺症について詳しくご説明いたします。
損傷部位によって後遺症が異なる
脳は大きく、大脳、間脳、脳幹、小脳に分かれています。
それぞれが役割を持ち、神経などを通して連絡を取り合うことで、体の機能を維持できるのです。しかし、それが「脳卒中」によって血管が詰まったり出血することで、神経が傷ついたり、機能が破綻してしまい症状として現れます。
さらに大脳は、前頭葉、後頭葉、側頭葉、頭頂葉に分かれています。
前頭葉であれば物事を判断したり、感情のコントロールをしたり、さらには注意のコントールなどを行っています。この部分が損傷を受ければ、怒りやすくなったり、注意散漫になるような症状が見られます。
他にも、後頭葉であれば視覚機能を司るため、損傷を受けると視覚に問題が出ます。
このように損傷部位によって現れる症状が異なってきます。
医師やリハビリの先生に聞いて、どんな場所を損傷して、どんな症状が出やすいのかを知ることが大切です。
脳卒中の主な後遺症
脳卒中を発症するときに、よく聞かれる後遺症は「運動まひ」「感覚まひ」「言語障害」でしょう。実際、脳卒中を発症した人はこれらの症状に困っていることも多いです。
しかし、後遺症には他にも様々ものがあります。
そこでここからは、脳卒中の代表的な後遺症をご紹介していきます。
|運動まひ
運動するときは、前頭葉の後端に帯状に存在する運動野から目的通り体を動かすための指令が出ます。指令は、神経を通して脳から脊髄(脳から背骨に伸びる神経の束)に降り、脊髄から筋肉に伝わることで体を動かすことができます。
神経は脳から脊髄に降りてくるとき交差しているので、脳の左側の前頭葉が損傷すると「右側」の体に、右側だと「左側」の体に症状が現れます。両方とも同時に血管障害が起こることは少ないので、体のどちらかに異変が起きる場合が多いことは知っておきましょう。
また、血管障害が広範囲で大きいものだと、多くの神経細胞を死なせてしまい、手足を動かすことができなくなる場合もあります。
反対に軽度なものであれば、手の細かい動きをするときに、使いづらさを感じたりする程度に収まる場合もあります。
|感覚まひ
何かに触れたり、触れられたりしたときなどの「感覚」は、神経を通して脊髄から登っていき視床という部分で中継され、前端に運動野に並走するように存在する感覚野に伝わります。そのため視床や頭頂葉が損傷を受けると、感覚まひが起こります。
感覚機能が少し低下した人からは、「なにか皮が1枚あいだにある感じがする」という発言がよく聞かれ、それが足の裏だと浮いたような感覚がする人もいます。
運動まひと同様に、片側に症状が出ることが多く、重度であれば全く感覚が分からなくなる人もいます。頭頂葉は視覚や聴覚などのあらゆる感覚情報を統合して、運動を司る前頭葉に伝達しています。そのため頭頂葉を損傷している場合、感覚がうまく統合できなかったり、情報を伝えられないことで、運動にも悪影響を及ぼすことがあります。
|視野障害
視覚の情報は、視神経から側頭葉を経由して後頭葉の内側に伝わります。
視神経や側頭葉・後頭葉に障害が起きると、半盲や一部が欠けたりするような視野障害が起こります。眼には、眼球を動かすための神経も3つ通っていて、この神経が障害を受けることで二重に見えたりすること(複視)もあります。特に、高齢者の方が視野の障害を起こすと、物にぶつかってしまいバランスを保つ筋力も低下しているので、転倒する可能性が高いです。転倒は、「脳損傷」「骨折」などの寝たきりの原因になる事象を引き起こしてしまうので、十分な注意が必要となります。
何か異常があれば、すぐに病院で診てもらうようにしましょう。
|嚥下(えんげ)障害
嚥下障害とは、口の中に入れた食べ物や飲み物をうまく飲み込めない状態のこと。
運動まひや感覚まひによって、舌や喉の動きが悪くなったり、飲み込む筋肉が落ちていることなどが原因です。
脳卒中になると、気管に入らないように蓋を閉じてくれる「喉頭蓋」の動きも悪くなり、「誤嚥性肺炎」を起こしやすくなります。
嚥下障害が起こると、のどの詰まりや誤嚥性肺炎のリスクが高まる他、食事の意欲が落ちて食事量が減ることで、体力や筋力の低下にも繋がるのを防がなければいけません。
また高齢者の場合は、脳卒中の治療経過中に誤嚥性肺炎や窒息によって致命的となることもありますので、嚥下障害の評価と治療は脳卒中後のリハビリにおいて非常に重要な部分となります。
|失語症・構音障害
失語症とは、左側の大脳にある言語中枢が障害されて「読み」「書き」「話す」「聴く」がうまくいかなくなることを指します。大きく分けて「言葉はなめらかに話せるけど聞いたことを理解ができない」タイプ(感覚性失語)と、「言葉は理解できるけどうまく話せない」タイプ(運動性失語)の、2つの失語症があります。障害されている部分によって症状は違い、2タイプがどちらも障害を受けた「全失語」というものあります。
一方の構音障害は、言葉を話すときに運動まひや感覚まひによって、舌や口がうまく動かず正しい音を作ることができず、不規則・不明瞭な話し方になる障害です。
前頭葉にある言語中枢が傷ついてしまうと、先ほど説明した1タイプである「言葉は理解できるけどうまく話せない」という運動性失語症になります。
この中枢の近くに、舌や口の運動を実行する脳の部位があるので、失語症と一緒に構音障害も発生することがよくあります。また、側頭葉にある言語中枢が傷つくと「言葉はなめらかに話せるけど聞いたことを理解ができない」という感覚性失語になります。
まとめ
いかがでしたか。脳卒中のダメージを最小限に抑えるには、早期発見・早期治療が大切です。基本的に脳卒中を発症後には、できるだけ早期にリハビリを行っていきます。そうすることで機能の回復も早く、予後も良い(後遺症が少ない)ことが分かっているのです。また、発症後すぐでもある程度歩行ができたり、生活の自立度が高いと、最終的に生活に戻れる人が多いことも分かっています。後遺症は、損傷や症状の程度にも大きく左右されますが、発症した人の認知機能や年齢、意欲なども強く影響を受けるようです。