教えて!脳血管疾患と脳卒中は何が違うの?

「脳卒中」、誰しもが一度は耳にしたことがある病名でしょう。しかし、「脳血管疾患」や「脳梗塞」、「クモ膜下出血」など、脳に関する疾患は種類が多く、どれが脳卒中に該当するものなのか、正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。今回はそんな脳卒中について、脳血管疾患との違いも含めて詳しく解説していきたいと思います。脳卒中がどのような疾患なのか、正確に把握できていないという方は是非読んでいってください!
脳卒中とは
脳卒中とは、突然生じた脳の血管の血流障害によって、急に手足が痺れたり動かなくなったり、言葉が話せなくなったり、あるいは意識がなくなったりする発作のことをいいます。脳卒中の1番の特徴は“突然に”起こることで、脳の血管が詰まったり、破損したりといったことが突然生じ、その瞬間から何らかの障害が生じるのです。
また、脳卒中は寝たきりになる原因として圧倒的に第1位を占めています。厚生労働省の2002年の報告では、全国約35万6000人の寝たきりの方のうち、約13万人が脳卒中が原因とされています。
脳血管疾患と脳卒中の違い
「脳卒中」と聞くと、「脳血管疾患」というワードが浮かぶと思います。この「脳卒中」と「脳血管疾患」を同義語としてとらえている方も多いですが、実はこの2つは同じ意味ではありません。脳卒中は脳血管疾患の一部を表しているのです。そもそも、脳卒中の「卒」は「突然」を意味しており、「中」には「あたって倒れる」という意味があります。「脳に突然なにかがあたって倒れる」、つまり、脳血管疾患のうち、「脳梗塞」「脳出血」「クモ膜下出血」の3つの疾患を指す言葉なのです。
脳卒中の種類
先ほど、脳卒中は脳血管疾患のうち、「脳梗塞」「脳出血」「クモ膜下出血」をさすということをお伝えしました。
今度は、その脳卒中に該当する3つの疾患について詳しく説明していきたいと思います。
■脳梗塞
脳梗塞は脳動脈の閉塞、もしくは狭窄に伴って神経細胞に血液が十分に供給されなくなり障害が生じる疾患のことをいいます。また、脳梗塞は病態により「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓」の3つに分けられます。「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」は脳血栓症の範疇に入り、細い血管の動脈硬化によるものを「ラクナ梗塞」、太い血管の動脈硬化によるものを「アテローム梗塞」と言います。また、心原性脳塞栓症は心臓内にできた血栓などの異物が血液の流れにのって脳に届き、脳動脈をつめて起こります。心原性脳塞栓症は突然大きな血管が閉塞することが多く、これら3つのうち、最も急激に症状が現れ、重症であることが多い疾患です。
■脳出血
脳出血は脳動脈が破れ、あふれでた血液が神経細胞を障害することで、症状が出現する疾患です。主に細い血管が高血圧に由来する動脈硬化で痛み、破綻することで起こります。細小動脈は脳内に入り込んでいるので、出血は脳内全体に広がります。
■クモ膜下出血
クモ膜下出血は脳動脈の破れにより症状が出現する疾患ですが、破れる血管は脳の表面を走る主幹脳動脈で、血管の一部が瘤状に膨れた脳動脈瘤が破裂します。動脈瘤が破裂すると、脳の表面を覆う「クモ膜」という薄い膜の内側に出血します。クモ膜下出血は脳卒中の中でも死亡率が高く、重症な病態です。
また、これら3つの疾患のほかに、脳梗塞と同じ機序で起こった神経状態が24時間以内に消失する「一過性脳虚血発作」という状態があります。
一過性脳虚血発作の場合、ほとんどは1時間以内に症状が消失し、数分間の発作で済んでしまう場合も少なくありません。そのため、脳梗塞の前触れの発作として重要であるにも関わらず、治療を行わず放置してしまい、その結果、脳梗塞を引き起こしてしまうケースが多いです。
脳卒中を疑ったら
手足に違和感を感じたり、視界に異変を感じるなど、脳卒中を疑ったら出来る限り早めに病院を受診しましょう。早い段階で診断をつけ、治療を開始することで、後遺症が軽くなる可能性があります。また、脳梗塞では発症してから4.5時間以内、8時間以内の方のみに行える特殊な治療があります。治療を開始するには検査が必要で、検査には1時間程度かかりますので、症状が出現してから遅とも2時間以内には病院を受診しましょう。また脳卒中が疑われる場合には、脳への血流を保つために、横にすることが重要です。意識がない時は楽に呼吸ができ、吐いたものが喉につまらないよう、側臥位にして、速やかに救急車を呼びましょう。
まとめ
このように、脳卒中とは脳血管疾患のうち「脳梗塞」「脳出血」「クモ膜下出血」のことをさします。どの疾患も放っておくと死に至る可能性がある危険な病気ですので、少しでも症状が現れたら、すぐに病院を受診するようにしましょう!