全国共済お役立ちコラム

2018年8月から改正された70歳以上の高額医療費制度について

医療費において、家計の大きな助けとなる高額医療費制度。その高額医療費制度が改正されたことはご存知でしょうか? 実は2017年にも改正されており、2年続けての改正となりました。医療費の備えに対する考え方にも影響が出る改正によって、どのような変更があり、それがどのような影響をもたらすのか確認していきましょう。

高額医療費制度について基本をあらためて把握しておこう

病気やケガで医療費がかさんだ時に大いに助けとなるのが高額医療費制度。医療費の自己負担分が年齢や所得区分によって定められており、その上限を超えた分は申請をすることで、支給を受けることができます。

対象となる医療費は基本的に、保険適用される診察に対し支払った費用になります。一方で、入院時の食費や居住費、交通費、先進医療などの保険適用外の医療費は対象になりませんので、注意しておきましょう。

改正前の区分と上限はどうなっているのでしょう

2018年8月に改正されたのは70歳以上の区分においてですが、まずは70歳未満の場合について簡単に確認しておきましょう。

医療費の自己負担の上限額は、大きく70歳未満と70歳以上で区分されています。

70歳未満の場合、①標準報酬月額が83万円以上の人、②標準報酬月額が53万~79万円の人、③標準報酬月額が28万~50万円の人、④標準報酬月額が26万円以下の人、⑤低所得者の5つに区分されます。

それぞれの自己負担限度額は①の場合25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%、②の場合、16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%、③の場合8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%、④5万7,600円、⑤3万5,400円、となっています。

一般的な社会保障制度と同じように、収入が高く生活に余裕のある人には手薄く、収入が低くあまり生活に余裕がない人には手厚くするという仕組みです。

改正前の70歳以上の区分は優遇されていた

次に、改正前の70歳以上の区分はどのようになっていたかを確認しましょう。区分は3つに分かれており、①現役並み所得者(標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の人)、②一般所得者(①及び③以外の人)、③低所得者となっています。

それぞれの自己負担額は①の場合、外来のみで5万7,600円、外来および入院で8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%、②の場合、外来のみで1万4,000円、外来および入院で5万7,600円、③の場合、外来のみで8,000円、外来および入院で2万4,600円となっていました。

70歳以上の人が70歳未満の区分の人と比較して、かなり優遇されていたことがわかります。これが、改正後は70歳以上の区分も70歳未満に近づくことになったといえます。

改正後は負担が厳しくなる

今回の改正は70歳以上の区分において行なわれました。改正前の現役並み所得者(標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の人)において、その中の区分が3つに分かれ、70歳未満と同様に、①標準報酬月額が83万円以上の人、②標準報酬月額が53万~79万円の人、③標準報酬月額が28万~50万円の人となりました。

それに伴い、上限額も、①の場合25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%、②の場合、16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%、③の場合8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%、となりました。現役並みの収入がある人にとって、年収に応じて大きく上限額が引き上げられたことになります。

また、現役並みの所得者において、これまでは「外来」のみという区分も別に設けられていましたが、これがなくなります。例えば、現役並み所得者の場合、入院を含む場合の自己負担限度額が約8万円なのに対して、「外来」では5万7,600円でした。入院せず通院だけであれば、1カ月に支払う金額が2万円以上も安かったのですが、こちらがなくなります。

ほかにも、現役並み所得者以外の区分においては、一般所得者の人の外来における上限額が1万4,000円から1万8,000円となり4,000円が引き上げられました。この結果、いずれも上限額が上がり個々の負担が増えることになりました。

どれくらい負担が増えるのか

それでは、どれくらい負担が増えるのか具体例で確認してみましょう。

例えば、1カ月に「100万円」の医療費がかかったとします。年収が800万円の場合の上限額は、16万7,400円+(100万円-55万8,000円)×1%なので、「16万7,400円+(44万2,000円)×1%」となるため、「17万1,820円」の上限額となります。

改正前なら同じ医療費に対して、負担する金額は「87,430円」なので、約10万円もの支払いが増えることになります。

今後はどうなっていくのか

日本では少子高齢化が進んでいるため、医療費の公的保障金額が増えているのが現状。それに伴い、保障を受けることができる条件が厳しくなるのは仕方がないともいえます。

今回の改正内容を詳しく知ることで、これからの高額医療費制度についても見通しをたてやすくなります。今のうちに先を見据え、公的な保障だけに頼るのではなく、医療保険などの備えについても考えておきましょう。