高額医療費制度の支給申請手続きについて

さて、前回のコラムまでで、高額医療費制度とは何か、そして実際のところどのくらいの金額が払い戻されるのかというお話をしてきました。
しかし一体どうしたら払戻金を受け取れるのかについては、未だ不明瞭な方も多いかと思います。
そこで今回は、高額医療費制度の申請方法を中心にお話ししていこうと思います。手続きとなると、なかなか複雑そうなイメージで避けてしまいがちですが、いざという時に自分が損をしない為にも、今のうちに少しでも知識をつけておきましょう。
おさらい:高額医療費制度とは?
高額医療費制度とは、ひと月(※)の医療費が高額になってしまった時に、自己負担限度額を超えた分が払い戻しされる制度の事です。
※ひと月とは、同一月(1日から月末まで)のこと。
また、この自己負担金限度額は年齢や収入区分によって異なり、更に医療費総額等により変動します。詳細は前回のコラムに載せていますので、参考にしてみてくださいね。
高額医療費制度の申請方法
高額医療費制度の利用について、一般的には以下のような流れになります。
①病院へ保険証の提示
②医療を受ける
③病院窓口にて、窓口負担額の支払い
④高額医療費支給申請
⑤払い戻し
≪申請方法≫
高額医療費の申請方法は加入している保険者により異なりますので、窓口に確認してみる事をおすすめします。
例:健康保険(協会けんぽ)の場合…
基本として「健康保険高額療養費支給申請書」の提出を求められます。
≪注意点≫
◇加入保険者によっては、病院から提出された診療報酬明細書を使用して自動的に高額医療費の払い戻しを行うところもあります。その場合は、最初に区から該当する世帯に申請書が届き、その申請書に必要書類を添付して郵送での提出となります。しかし、上記①~⑤のように、 何も通知がなくこちらから申請しなくてはならない場合もある為、事前に加入保険者に確認しておく必要があります。
◇必要書類も事前に窓口に確認をとる必要がありますが、以下の準備はしておきましょう。
・領収書
・保険証
・印鑑
・振込先口座の記載のあるもの
≪必ず知っておきたい事≫
◇有効期間:
高額医療費の支給を受ける資格は、診療を受けた月の翌月1日から2年間となります。よって、過去2年間の間の高額医療費(時効になっていないもの)であれば支給申請ができる可能性がありますが、2年を過ぎてしまえばどんなに高額であっても払い戻しは受給できませんので、注意が必要です。
◇払戻金を受け取るまでの期間:
実は、高額医療費の申請をした場合の支給までにかかる期間はなんと、約3ヶ月にもなります。
通常審査は、病院からの診療報酬明細書などのレセプトが確認できた後に進めるのですが、レセプトの確認にある程度の時間がかかってしまう為、このように時間を要してしまうのです。つまり、支給されるまでは自腹で立て替える必要があり、「払い戻しされるから安心!」と気軽に考えていると、窓口支払額が大きくなってしまった際に一定期間で家計が苦しくなる可能性がでてきますので、注意が必要です。
では、必ずしもこの3ヶ月間は自腹立て替えでなければならないのでしょうか?この負担を避ける方法はないのでしょうか?
次からは、高額医療費制度を利用する際、払戻金が支給されるまでの間で家計を圧迫しない様に、是非覚えておいて頂きたい2つの制度をお話していきます。
立て替えは苦しい…!そんな時に使える2つの制度とは?
◎事前に高額の支払がわかっている場合:「限度額適用認定証」
急な入院や手術などで高額の医療費がかかる事がわかっている場合に、この限度額適用認定証の申請をしておくことで、窓口支払額を自己負担限度額までにとどめる事ができ、高額な医療費を自腹で立て替える必要がなくなります。
こちら、窓口支払額が自己負担限度額を超過するかどうかがわからない場合でも申請が可能な為、とりあえずの申請をおすすめ致します。
限度額適用認定証の申請手順は以下のような流れになります。
①加入保険者へ、限度額適用認定証の交付申請をする
②保険者より、限度額適用認定証が交付される
③病院などの医療機関へ、限度額適用認定証を提示する
④高額になった窓口支払の際に、自己負担限度額までを支払う
≪申請方法≫
加入保険者や加入保険支部によって違いがありますので、まずはご自身のご加入保険者にお問い合わせして確認する事をおすすめします。
例:健康保険(協会けんぽ)の場合…
加入している協会けんぽ支部に、「健康保険限度額適用認定申請書」を郵送にて提出する事により、約1週間で「限度額適用認定証」が発送されます。
※加入保険者によっては、保険証や本人確認書類、印鑑の提示を区役所窓口にて求められる場合もあります。
≪70歳以上の対応は?≫
◇所得区分:「現役並み(年収約1,160万円以上)」と「一般」の方の場合
→限度額適用認定証は発行されませんが、健康保険証と高齢受給者証を病院窓口に提示することで、自己負担限度額までの支払いとなります。
◇所得区分:「現役並み(年収約370万円~約770万円)と「現役並み(年収約770万円~約1,160万円)」の方の場合
→病院窓口に、健康保険証、高齢受給者証そして限度額適用認定証を提示することで、自己負担限度額までの支払いとなります。
◎立て替えが難しい場合:「高額医療費貸付制度」
高額療養費の払い戻しが行われるまでの期間に、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で借りることが出来る制度になります。
≪申請方法≫
加入保険者や加入保険支部によって違いがありますので、まずはご自身のご加入保険者にお問い合わせして確認する事をおすすめします。
例:健康保険(協会けんぽ)の場合…
以下4点の書類を提出する必要があります。
・高額医療費貸付金貸付申込書
・高額医療費貸付金借用書
・病院が発行した保険点数のわかる請求書もしくは領収書の複写(医療費請求書も可)
・高額療養費支給申請書(貸付用)
≪貸付金の支払はいつ?≫
申請受付後から2~3週間で、指定口座に振り込まれます。
※3ヶ月後に高額医療費給付金額が決定した際に、「高額医療費給付金額-貸付金額」分が指定口座に振り込まれます。しかし、「高額医療費給付金額<貸付金額」となった場合は返納通知書が送付されますので、期日までに納付する必要が出てきます。
まとめ
医療費が大きくなってしまった際に利用したい高額医療費制度。申請しないと大きな損になる可能性がありますので、面倒くさがらず、必ず利用しましょう。その他、一定期間の自腹の立て替えが難しい場合の制度もありますので、全て理解した上で、自身に一番負担の少ない制度の利用をおすすめします。