入院した場合の高額医療費制度

今は健康に過ごしていても、突然の事故でけがをしたり、病気になって入院してしまう日が来るかもしれません。
そんな時、入院にはいったいどのくらいの費用がかかるのでしょうか?入院が長期間になった場合、収入が減る上に費用が高額になってしまったら払えるのか心配ですよね。入院でかかる費用のうち、どこまで保険でまかない、どこまで自己負担なのでしょうか。
今回のコラムでは突発的な入院のリスクに備えて、入院時の高額医療費制度について一緒に見ていきましょう。
そもそも入院費用はどのくらい必要なの?
入院すると病院で滞在する費用だけではなく、こまごまとした出費がかさみます。けがや病気で入院した場合、どのような費用が必要になるのでしょうか。
◎入院に必要な費用
入院基本料:入院した際に1日単位でかかる基本料金。
治療費:薬代、点滴や注射などの処置代、手術やリハビリ、検査などの費用。
差額ベッド代:個室を希望する場合の追加費用。
入院時の食事代:1食460円と定められている。特別食の場合、さらに追加料金がかかる。
交通費:付き添いや面会の為にかかる病院までの交通費。
その他の生活費;着替えや有料のテレビ代、日用品など。
◎平均的な入院費用
治療期間や内容によって変わりますが、ここでは平均的な入院費用をご紹介します。
[令和元年 入院時の自己負担額データ]
5万円未満→7.6%、5~10万円未満→25.7%、10~20万円未満→30.6%、20~30万円未満→13.3%、30~50万円未満→11.7%、50~100万円未満→8.4%、100万円以上→2.7%
平均:20.8万円
上記のデータを見ると、「10~20万円未満」が一番多くて約30%、次に多いのが「5~10万円未満」で約25%を占めています。20万円未満が全体の約3分の2、20万円以上が全体の約3分の1となり、費用が高額になる方も少なくありません。
入院期間が長くなればなるほど費用がかさみます。5日間未満の入院であれば10円万以下で収まることが多いようですが、1ヶ月を超える長期間の入院であれば50万以上かかることもあるようです。国民皆保険制度のおかげで医療費3割負担とはいえ、家計への影響は大きいですよね。そこで高額医療費制度を利用することによって、公的保険の適用範囲内の金額が抑えられ、さらに負担を軽くすることができます。
高額医療費制度を利用した際の自己負担額
◎69歳以下の自己負担限度額
①年収約1,160万円以上→252,600円+(医療費−842,000)×1%
②年収約770~約1,160万円→167,400円+(医療費−558,000)×1%
③年収約370~約770万円→80,100円+(医療費−267,000)×1%
④~年収約370万円→57,600円
⑤住民税非課税者→35,400円
◎70歳以上の自己負担限度額(平成30年8月診療分から)
①現役並み所得者
年収約1,160万円以上→252,600円+(医療費−842,000)×1%
年収約770~約1,160万円→167,400円+(医療費−558,000)×1%
年収約370~約770万円→80,100円+(医療費−267,000)×1%
②一般の所得者
年収156万円~約370万円→57,600円
③低所得者
住民税非課税世帯Ⅱ→24,600円
住民税非課税世帯Ⅰ(年収80万円以下など)→15,000円
申請方法
◎事前手続きの場合
事前に保険者に「限度額適用認定証」を申請して取得します。窓口支払いの段階で「限度額適用認定証」を提示することで、公的保険適用内の医療費が自己負担限度額になります。医療費が高額になるとあらかじめわかっている場合や、窓口での支払いを最小限に抑えたい場合におすすめです。
◎事後手続きの場合
窓口で国民皆保険の自己負担の割合に応じて医療費を払います。後日、高額医療費の支給申請をして、自己負担限度額を超過した金額が払い戻しされます。この方法だと申請してから支給までに時間がかかり、一時的に医療費を立て替えなければならないため、高額になると家計の負担になる場合があります。
高額医療費制度を使うと、どのくらい負担が軽くなるの?
高額医療費制度を使うと実際どのくらいの金額になるのか説明していきます。わかりやすいように、入院費用が100万円かかったとします。
◎69歳以下、年収約370万円~約770万円の方の場合
国民皆保険によって、69歳以下は収入に関係なく自己負担額が一律で3割負担になります。この時点で100万円のうち、自己負担額が30万円になります。
高額医療費制度を使うと、自己負担限度額を払うことになります。69歳以下で年収約370万円~約770万円の方の場合、8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%なので、8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7430円になります。30万円の差額の21万2570円は保険から支払われるため、もし医療費が100万円かかってしまっても、実際に支払うのは8万7430円ということになります。
◎70歳以上、年収約156万円~約370万円の方の場合
70歳以上は国民皆保険の自己負担額が3割ではなく2割になるため、自己負担額は20万円になります。
高額医療費制度を使うと、70歳以上で年収約156万円~約370万円の方の自己負担限度額は一律で5万7600円になります。差額の14万2400円は保険から支払われるため、実際に払うのは5万7600円になります。
■まとめ
今回は入院した場合の高額医療費制度について見ていきました。もし突然入院してしまっても、困らないような制度があって少し安心しましたね。次回のコラムでは、高額医療費制度が適用されない場合をご紹介します。