油断しやすく注意が必要:20代の交通事故

社会人の1人として、多くの人が初めて大きな責任を担いながらの生活が始まる20代。
そんな20代は社会的にまだまだ未熟な世代であり、これから大人として様々な事を体験しながら経験を積み、成長をしていく、言わばスタートラインに立ったばかりの年代でもあります。
しかし、大人と同じ経験ができるようになり自律的に行動するようになる人が多い反面、若いが故の経験・知識不足により、毎年痛ましい交通事故が絶えないのが現状です。
今回は、20代の交通事故についてお話します。
20代に多い死因とは。
20代というと「まだまだこれから」という年代ではありますが、実はそんな若くて健康的な20代でも年間約4000人以上の人が亡くなっているのが現状です。
厚生労働省の平成29年のデータ「死因順位別死亡数・死亡率,性・年齢別」より、主な死因は以下のようになります。
【平成29年の主な死因:20~24歳】
1位:自殺(1057人)
2位:不慮の事故(332人)
3位:悪性新生物(174人)
【平成29年の主な死因:25~29歳】
1位:自殺(1048人)
2位:不慮の事故(285人)
3位:悪性新生物(269人)
20代の死因上位3位までを記載しましたが、お気づきの通り20代前半も後半も同様、第2位に「不慮の事故」があがっています。30代以降は、第1~2位には主に病気又は自殺が入ってくる為、20代での不慮の事故の割合が、他の年代よりも多い事がわかります。
そもそも不慮の事故とは?
不慮の事故とは、「急激かつ偶然な外因による事故」の事を指します。
「急激」とは、事故発生から傷害までの経過が直接的、かつ時間的間隔のないこと指します。
「偶然」とは、事故の発生やそれによる傷害が予見できない事を指します。
「外因」とは、事故及び事故の原因が、被害を受けた人の身体の外部から作用する事を指します。
事故の例として、以下のようなものが挙げられます。
・交通事故
・医薬品などによる中毒
・火災による事故
・自然や環境要因による事故
・転倒、転落
・溺水
交通事故には、鉄道・水上機関・航空機・その他の道路交通機関事故も含まれます。
全年齢で多い不慮の事故とは?
では実際に不慮の事故の中でも、多い事故内容は何なのでしょうか。
厚生労働省の平成29年「死亡数・死亡率、死因簡単分類別」のデータにより、不慮の事故による死亡数は以下のようになります。
【平成29年の死因:不慮の事故】
総数:40,395人
1位:転倒・転落・墜落(9,150人)
2位:窒息(9,095人)
3位:溺水(8,194人)
4位:その他(7,492人)
5位:交通事故(4,927人)
6位:煙、火及び火炎(1,008人)
7位:中毒(529人)
ここで意外な事が、一番多いような印象のある交通事故は、5位に留まっており、一番多いのが転倒や転落で、交通事故の1.9倍にも及びました。
20代に多い不慮の事故とは?
では、20代ではどうでしょう。同じように転倒・転落が1位にあがるのでしょうか。
平成29年の人口動態調査のデータより、15~29歳の不慮の事故による分類別の死亡数は以下のようになっています。
【平成29年の不慮の事故による分類別死亡数:15~29歳】
1位:交通事故(480人)
2位:溺水(113人)
3位:転倒・転落・墜落(76人)
4位:中毒(60人)
5位:窒息(48人)
15~19歳も統計に入っていますが、このデータを見ると、全年齢では第5位に留まっていた「交通事故」が、20代(+10代後半)に絞ると第1位にのぼっている事が確認できます。
20代の交通事故、死傷者数は年間どのくらい?
今までは死亡数に焦点をあててきましたが、20代の交通事故による、ケガも含めた全体の死傷者数はどのくらいになるのでしょうか。
厚生労働省の「年齢層別死傷者数の推移」のデータより、
【各年の交通事故による死傷者数:20代】
平成29年:98,128人
平成30年:86,406人
令和元年:74,420人
となっています。
幸いにも年々交通事故による死傷者が減少傾向にあるとはいえ、まだまだ数多くの事故が毎年起きている事がうかがえます。
◎交通事故の内容とは?
交通事故の中でも、件数の多い事故には例として自動車、自動二輪車、原付自動車や自転車の乗用中の事故があげられます。では、平成29年~令和元年のそれぞれの事故傾向について、15~29歳の状況を見てみましょう。
【自動車乗用中事故】
自動車の免許を取得できるのは18歳からとなります。
一番事故件数が多い傾向にあった年齢層は25~29歳で(約26,000~35,000件)、一番低かったのは15~19歳の層でした。一般的に免許取得年齢は18~20歳位が平均の為、十分に慣れてきた25歳以降での気の緩みによる事故が発生しやすいのかもしれません。
【自動二輪車・原付自動車乗用中事故】
普通自動二輪者と原付自動車の免許は16歳から、大型自動二輪車でも18歳には取得可能になります。
事故件数から見ると、原付自動車・自動二輪車共に、20~24歳の層で際立って多い傾向にありました(約3,000~4,500件)。まだ自動車を運転したことがない人も多い為、危険度の認識が甘く、車の間を通り抜ける際の接触や、スピードを出しやすい為、経験不足でありながら慣れてきて自身の運転技術を過信し始める20代前半での事故が多いのかもしれませんね。
【自転車乗用中事故】
こちらは、20代前半・後半で大差はありませんでしたが、15~19歳の層で顕著に多い傾向がありました(約14,800~16,500件)。自転車は誰でも気軽に乗る事ができる分、交通ルールをまだ把握できていない若い層の事故が多い事がうかがえます。
とはいえ、20代後半でも毎年5,000件程の自転車事故が起きている為、他人事ではありません。
リスクに備える
まだまだリスクとは無縁に思える20代。実は病気以外でも自身のすぐ近くにリスクは隠れています。「自分は大丈夫」、そう決めつけず、今一度自身の状況や環境について考えてみましょう。
特に交通事故による傷害は予期せず突然起こり、軽度から重度の場合、最悪死に至る場合まで様々な可能性が考えられます。自身が万が一事故に遭い働けなくなった場合や入院・手術を要する場合はどうするべきか、などを健康なうちに考えておくことが大切です。
経済面で不安に感じる場合は、公的医療保険の理解や、万が一のケガや病気に備える「医療保険」、死亡した場合に遺された家族に備える「終身保険」などの民間保険が心強いサポートになりますので、一度調べてみると良いでしょう。