数字で見る三大疾病

前回のコラムで、三大疾病が命に関わるような恐ろしい病気だという事が少し理解できたかと思います。
しかし、やはりどのくらいの確率でかかるのか(罹患率)、また罹ってしまった場合はどのような予後になるのかを数字で把握していなければ、本当の意味での三大疾病の怖さを理解する事はできません。
今回は数字を見ながらお話を進めていき、日本の死因における三大疾病の占める割合から、ガン・心筋梗塞・脳卒中、それぞれ3つの病気の罹患率や予後について見ていこうと思います。
三大疾病は、実際どのくらい怖い病気なのか
2016年のデータを見ると、日本人の死亡者数130万7000人のうち、ガンが37万3000人、次いで心筋梗塞(心疾患)が19万8000人、そして脳卒中(脳血管疾患は)10万9000人となっています。
割合で表すと、ガンは全体の29%、心筋梗塞は15%、そして脳卒中は8%となります。
つまり「三大疾病」全体で、日本の死亡数全体の約52%を占めているのです。
それぞれの病気の罹患率・予後
では、三大疾病であるガン・心筋梗塞・脳卒中において、罹患するリスクをそれぞれ見ていきましょう。
◎ガン
2017年のデータより、男性が罹患するガンの部位で多いものが、前立腺ガン・胃ガン・大腸ガンになります。対して女性は、乳ガン・大腸ガン・肺ガンとなり、女性特有のガンが上位に入る傾向にあります。
男女それぞれの総合的にかかりやすいガンの部位は上記に挙げた通りになりますが、年齢層を見てみると少し違ってきます。
男性の40歳代頃の罹患部位分布を見てみると、胃や大腸、そして肝臓などの消化器系のガンが多くを占めます。しかし、そこから70歳代に向かうに従い、肝臓ガンの割合が減ってくる代わりに、肺ガンや前立腺ガンのリスクが高まってきます。さらに90歳代に向かうと、肝臓ガンのリスクはより低くなり、前立腺ガンの割合は減少してきますが肺ガンのリスクは上がる一方となっています。
対して女性は、40歳代の頃は乳ガンや子宮ガンなどの女性特有のガンの割合が圧倒的に多くを占めていますが、高齢になるに従いそのリスクは減少傾向にあります。その代わり、大腸ガンや肺ガンのリスクはみるみる増加する傾向にあります。
【罹患率】
(男性)
※20歳:10年後→約0.5%、20年後→約1%、30年後→約2.5%、40年後→約7.5%、
50年後→約22%、60年後→約43.5%
※40歳:10年後→約1.5%、20年後→約7%、30年後→約21%、40年後→約43%
※60歳:10年後→約16%、20年後→約41%
(女性)
※10歳:10年後→約0%、20年後→約0.5%、30年後→約2%、40年後→約6%、
50年後→約12%、60年後→約21%、70年後→約33%
※30歳:10年後→約1.5%、20年後→約5.5%、30年後→約12%、40年後→約21%、50年後→約32.5%
※50歳:10年後→約6.5%、20年後→約16%、30年後→約29%
上の数字を見ると、10年おきの罹患率がそこまで高くないように見える為安心してしまいそうですが、一生涯で考えると男性は約65.5%、女性は約50%前後にものぼります。つまり2人に1人は一生涯のうちにガンに罹患する計算になりますので、実はとても身近な病気なのです。
◎心筋梗塞
心筋梗塞(その他虚無性心疾患も含む)の患者数は、1996年に119万人だったのに対し、2017年には72万人と、減少傾向にあります。
また、同じく2017年のデータより、年齢を見ると患者数全体としては30歳代から60歳代にかけて大きく増加していますが、性別で見ると男性の方が女性の約2~10倍ほど多く占めています。女性は、男性と同じように30歳代から罹患のリスクはあるものの、男性のように大きく増加するわけではなく、50歳以降からリスクが増加する傾向にあります。
しかし、これで女性が安心できるというわけではありません。女性は男性よりも遅れて50歳以降からリスクが上がり始めますが、実はそこからは男性に追いつく程のペースで急上昇するのです。
【死亡率】
2017年のデータより、全体の心筋梗塞(その他虚無性心疾患も含む)患者数(72万人)から見た死亡率:
※急性心筋梗塞が原因による死亡(約3万5千人)→全体の約4.8%
※その他の虚血性心疾患が原因による死亡(約3万5千人)→全体の約4.8%
※全ての虚無性心疾患(心筋梗塞+その他)が原因による死亡(約7万人)→全体の約9.6%
つまり、心筋梗塞(その他の虚無性心疾患も含む)患者100人のうち、約9~10人が死亡するリスクがあるという事ですので、非常に怖い病気になります。しかし、復職率は80%を超えるなど、死亡を除いた予後は悪くないケースが多いようです。
◎脳卒中
現在、三大疾病の中での脳卒中の死亡率は、ガン、心筋梗塞に次いで第3位となっています。
また、患者数は1996年には約173万人でしたが、2017年には約111.5万人と、徐々に減少傾向にあります。
一般的に脳卒中のリスクは70歳代前後で最も高くなる傾向にありますが、だからと言え、高齢層「だけ」がかかる病気ではないという事は頭に入れておかなければなりません。
とある病院内の一部の脳卒中患者年齢分布データを見てみると、20歳代は全体の約1%、30歳代は全体の約0.5%、40歳代は全体の約3%の割合で患者がおり、また別の病院では、30歳代は全体の約1%、40歳代は全体の約4~5%の割合でいる事がわかりました。更に2017年の全国脳卒中患者数を見ると、30歳代で約6000人の患者がいる事がデータとして出ています。
全体からすると少ないように思えますが、決して「まだ若いから大丈夫」と言えない病気なのです。
【予後の生活】
過去一定期間における、18歳~65歳の脳卒中患者(発症3ヶ月後)の予後:
※全く不自由がない~身の回りの事は自分で行える→全体の約69%
※歩行は自身で行えるが、介助は必要→全体の約6%
※歩行やその他身体的要求に対して介助が必要→全体の約11.5%
※寝たきりで、要介護→約6%
※死亡→約7%
このように見ると、意外と生活に問題がない患者の割合が多いように思えますが、発症した患者のうち、死亡を除いて100人に約35人が以前の日常生活を送れないという計算ですので、決して予後が良い病気というわけではありません。
まとめ
数字で見る事で、三大疾病の具体的な怖さがよりご理解頂けたかと思います。どれも高齢層でリスクが高まる事が一般的ですが、若年層でも油断できない事を頭に入れておきましょう。