心筋梗塞は突然に?前兆症状はある?

皆さんご存じの通り、人の体の最重要臓器は心臓ですよね。
そんな大切な心臓も、様々な要因により病気になってしまう事があります。今回のお話は、日本の死因第2位となる「心筋梗塞」についてです。
心筋梗塞という病名は何度も耳にした事があるかとは思いますが、実際に心臓に何が起きているのかご存じですか?
今回は、心筋梗塞のメカニズムを解説し、いざという時にサインを見逃さないよう、前兆症状についても一緒に見ていきましょう。
心臓の働きとは?
心臓は握りこぶしくらいの大きさで、血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。1分間に約60~80回のペースで拍動を繰り返しており、1日では10万回以上となります。1回の拍動で送り出す血液量は約50mlで、1分間ではなんと3~4ℓも送り出している為、50秒程で全身を一周してしまう程速く流れています。
そして心臓に送り出される血液は、赤血球・白血球・血漿・血小板からできています。
・酸素を送り二酸化炭素を回収する役割 =赤血球・血漿
・栄養を送り、いらないものを回収する役割 =血漿
・体を守る為、細菌などと闘う役割 =白血球
・ケガなどで出血した際に、血を止める役割 =血小板
血液の役割を理解した上で考えると、血液を全身へ送る心臓がいかに大事な臓器かがわかりますね。
心筋梗塞とは、心臓になにが起こった状態?
心筋梗塞とは、心臓が酸素不足により壊死してしまう病気です。
先ほど、心臓は全身へ血液を送るポンプの役割をしていると述べましたが、心臓の筋肉(心筋)自身も酸素や栄養を得る為に血液が必要になります。その心筋に血液を供給するのが「冠動脈」という血管になります。冠動脈は動脈硬化になりやすく、病変してしまうと血管壁内に柔らかいプラークが形成されるのですが、それが破ける事により血栓が生じ血管が詰まり、心筋に血液が送られなくなってしまうのです。
心筋の壊死は、血管が詰まり血流が止まってしまってからわずか20分で起こります。また、血栓が大きければ大きいほど心筋細胞の破壊範囲も大きくなってしまうように、血栓の大きさと心筋細胞の破壊範囲は比例するのです。細胞は一度壊死してしまうと元に戻る事はできません。
また、心筋梗塞と同じようなものに「狭心症」がありますが、心筋梗塞のように血管が完全に詰まるわけではありません。狭心症には、安定狭心症と不安定狭心症の2種類があります。
・安定狭心症:
プラークが大きくなった場合や、小さいプラークの形成部分で一時的な発作が起こる事により血管が収縮した場合に血液の流れが悪くなる。
・不安定狭心症:
形成されたプラークが破れて血栓が生じ、血流が悪くなる。
しかし、狭心症は完全に閉塞していないから大丈夫というわけではありません。なぜなら、急性心筋梗塞症の50~60%は不安定狭心症の時期を経て発症すると言われているように、狭心症になった後に本格的な急性心筋梗塞になる可能性が高いからです。
心筋梗塞、その前兆とは?
突然起こるイメージのある心筋梗塞ですが、その前兆症状はあるのでしょうか?
実は全ての心筋梗塞に前兆があるわけではなく、前兆なしに起こる人は約1/3もいるのです。では、残りの2/3は、どのようなサインが現れるのでしょうか。
「なんだかいつもと体調が違う」と違和感があった時に、それが心筋梗塞の前触れであると見逃さないよう、しっかりと理解しておきましょう。
心筋梗塞の前兆として、以下の症状があらわれる事があります。
・胸の痛み、圧迫感、胸やけ
・吐き気
・倦怠感
・呼吸困難
・冷や汗
・背中、腕、肩、顎、歯の痛み など
上記の中でも「胸の痛み」が典型的な前兆症状になりますが、狭心症の場合、圧迫されるような痛みが通常数分から10分程続きます。運動した時などに起こりやすく安静にしていれば回復はしますが、その後軽い体動でも痛みが生じた場合や、安静にしている状態でも痛みを感じるようになった場合、更に痛みを感じる時間が長くなってきた場合などは「不安型狭心症」で、短期間で心筋梗塞になってしまう可能性が高い為より注意が必要になります。
狭心症の場合、一般的に痛みが20分以上は続きません。万が一それ以上続くような痛みがあれば、冠動脈が完全に詰まる心筋梗塞を起こしている可能性があります。
また、その時の痛みは胸の中央から裏側にかけて圧迫感、重圧感、そして絞めつけられる感じがあり、放射痛と言って歯や背中、腕など、心臓とは全く別の所に痛みを感じる事もあります。よって、心臓病と結びつかないケースが多い為、事前にこれらの症状を理解しておく事も重要です。
心筋梗塞の治療法とは?
急性心筋梗塞が起こってしまった場合でも、胸の痛みが発生してから2時間以内に治療が完了すれば、後遺症は残りません。残念ながら、それ以上時間が経てば経つほど治療効果低下していき、48時間遅れてしまった場合は期待される治療の効果は得られなくなります。
現在は主な治療法として、「カテーテル治療法」がありますが、カテーテル治療法の中でも最も選択されているのが「ステント治療」です。
ステント治療は、金属でできた網目の筒(ステント)を、直径数㎜の柔らかい管(カテーテル)につけたものを冠動脈までするすると挿入し、狭窄部分でカテーテルのバルーンを膨らませる事によりステントを開かせ留置し、血流を確保します。
カテーテル治療法が終了したら、予後の改善の為に抗血小板剤など数種類の内服薬を使用した投薬治療が始まります。
まとめ
心筋梗塞は症状が出てから治療終了するまでの時間がとにかく大事になってきます。狭心症の場合は痛みが20分以内、それ以上持続する場合は…と述べましたが、もしいつもと違うような胸の痛みや圧迫感、冷や汗などを感じたら、20分様子を見るよりも躊躇せず早急に救急車を呼び、治療を受けるため行動する事が大切です。